2009年2月4日発売の気になるシングル・アルバムはコレ
アルバム「It's Not Me, It's You 」/Lily Allen
イッツ・ノット・ミー、イッツ・ユー (2009/02/04) リリー・アレン 商品詳細を見る |
“元祖マイスペース姫”であり“21世紀のポップスター”であるUKの破天荒娘リリー・アレンの2ndアルバム。
1stアルバム「Alright, Still」は全世界で250万枚以上を売り上げ、一躍トップアーティストの仲間入りを果たしたリリー。ブレイクとともにその型にはまらない言動がメディアの注目の的となり、自分の意図しない形で世間の注目を浴びたりもした彼女だが、やっぱり“21世紀のポップスター”の肩書きは間違っていなかった。
今作では前作でのスカ色はなりをひそめ、一貫して“エレクトロ・ポップ”なキラキラチューンが散りばめられている。彼女のなかでは、もうスカ・ポップという表現においては高みに達したということなんだろう。ま、実際達しているんだけど笑。いつまでも同じ場所に立ち止まらず、新しい表現を探求した結果が近作でのエレクトロ・ポップという形だったわけだ。
そして、プロデューサー陣にも変化が見られた。前作では5組のプロデューサーが参加して、ま、デビューに相応しい豪華なキャッチーアルバムが誕生したわけだが、今作ではそのうちの1人であるグレッグ・カースティンとリリーの2人のみで作り上げられた。それに伴ってアルバムを通しての統一性が高まり、一つの“作品”としての完成度がグンと高まったのが感じられる。リリーも言っているが、デビューアルバムはどれをシングル化しても大丈夫と断言できるキラーチューンばかりのアルバムであった。しかし、セカンドでは一つのアルバムとしての作品性を高めるために、それぞれのキャラ立ちよりもアルバムとしての雰囲気を重要視したようだ。
その結果、どうなっているか。。。
「するめ化」である。
リードシングル「The Fear」を取り上げてみると、聴いた方は分かると思うが、これまでのシングル「Smile」や「LDN」などに比べてメロディーの主張が弱まり、よりサウンド全体で聴かせるといった感じになっている。ま、だからと言ってキャッチーじゃないのかと言えばそんなことは決して無くて、自分はイントロのピアノだけでグッと来てしまいました・・・笑。それは、やっぱりリリーのメロセンスの高さってことだろう。そして、グレッグ節がしっかりと効いたアレンジがこの作品の要だ。
グレッグ・カースティン。前作では「Everything's Just Wonderful」、「Not Big」、「Alfie」を担当していた。名前は全然覚えてなかったけど、リリーが特集されている雑誌「HEARD TO EXPLAIN」で「ザ・バード&ザ・ビーのマルチ楽器奏者」って紹介されてて、ピンときた。The Bird and the Beeといえば、1年前くらいにJ-WAVE(以外でもかな?)でかかりまくっていた癒し系エレクトロ・ポップのアーティストで、自分もそのときはだいぶ気になって、タワレコでそのCDを前に5分くらい悩んだ覚えがあったりする笑。そして、iTunesのショッピングカートにはそのCDが未だに残っていて、ダウンロードせずいる苦笑。1500円はなかなか勇気がいるもんです。
ま、それはそれとして。
そんなグレッグのサウンドは2・5・9・11で特に現れているようなザ・バード・・・のときに見せる癒しエレクトロを主流としながらも、6「Back To The Staret」では攻撃的な疾走エレクトロを放ち、7「Never Gonna Happen」では前作での「Alfie」に通じるような人形劇的キャッチーポップを披露している。
そして、リリーの語る上で語れない詞。
子供の流産・祖母の死などなど、スキャンダルの裏のプライベートでも悲しい出来事があったリリー。しかし、リリー節は相変わらずで、3では前作の「Not Big」みたく情け無い男を一刀両断、8ではタイトルが「Fuck You」である笑。
しかし、前作ヒットによる環境の激変に伴った変化が見られないわけも無く、1では薬物問題、8ではブッシュ政権、11では宗教問題など、社会的・政治的な問題について触れている。これは、本人いわく、セレブの仲間入りを果たし、少し変わった生活を送っている今、自分の生活をネタにしても、みんなには分かってもらえない。だから、誰にでも共感できる詞を書くためには、時事ネタが丁度良かったそうだ。納得。
しかし“セレブ”の一員となった今でも人の温もりへの想いの強さというものは感じられる。むしろ、前作よりも増えているような。鬼っ娘としてのキャラが立っているリリーだが、2や6や9で見えるのはリリーの一途で真直ぐで弱くてとても人間的な部分だ。ラスト曲(ボーナス・トラック除く)「He Wasn't There」は父親キース・アレンに向けて書かれている。キースはこれを聴いて泣いたそうだ。ま、娘にこんなこと歌われちゃぁねぇ・・・。詞、要チェック!!
・・・とまぁ、変わったこと・変わらないこと色々あったけど、リリーが“21世紀のポップ・スター”であるのは紛れも無い事実のようだ。「自分の才能に自信が無い」らしいが、脳裏に焼きつくようだったり、何度でも聴きたくなるようだったりする美しいメロディー、センセーショナルで深い歌詞、クセになる声、どんな環境になろうと間違わず、いつも的確な自己認識能力、そしてそれをもとに行う人選、何をとっても一流。才能の塊だ。
It's Only You,Lily!
(やっぱ、リリーじゃなきゃ!)
〔曲目〕
1.EVERYONE’S AT IT エヴリワンズ・アット・イット
2.THE FEAR ザ・フィアー
3.IT’S NOT FAIR イッツ・ノット・フェアー
4.22
5.I COULD SAY アイ・クッド・セイ
6.BACK TO THE START バック・トゥ・ザ・スタート
7.NEVER GONNA HAPPEN ネヴァー・ゴナ・ハップン
8.FUCK YOU ファック・ユー
9WHO’D HAVE KNOWN フード・ハヴ・ノウン
10.CHINESE チャイニーズ
11.HIM ヒム
12.HE WASN’T THERE ヒー・ワズント・ゼア
13.KABUL SHIT * カブール・シット
14.FAG HAG * ファグ・ハグ
(* 日本盤のみのボーナス・トラック )
〔オススメ曲〕
1、2、7、8、9
(by toumeiningen)
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